愛着障害についての関心が急速に高まっています。
私のところにやってくる方の多くには、この愛着障害が原因と思われる人間関係の問題悩み苦しんでいる方がたくさんいます。じつは、悩みや問題の多くは人間関係です。親子、友人、恋愛、結婚、仕事、ありとあらゆる悩みの元になっている人間関係がなかなかうまくいかない、あるいは、人が怖くて生き辛い、といった悩みの多くに関係しているのが「愛着」だといわれています。
では愛着ってそもそもどういう意味でしょうか?そこからお話ししていきたいと思います。
愛着とは何か?
愛着とは一言で言うと「愛情を通じた人と人との繋がりや絆を結ぶ能力」と私は言います。正直言葉で言い表すには難しいのですが、私は「愛されているという安心感」「自分はここに居ていい」「自分はいつも守られている」という「温かい感覚」に属する感覚的なものだと思っています。その方がわかりやすいかな。
よく人に「愛着を持つ」「愛着を感じる」なんて言葉で使いますね。そんな感じです。
この愛着というものは幼少期に親との間で形成され、将来、人と関わる、人に親しみを感じる、人に好意を持つ、それらの人間関係の持ち方に大きく影響し、一生を左右するものでもあります。
一度形成された愛着スタイルは生涯影響し続け、友人関係、仕事の仕方、恋愛、結婚、子育て、健康にいたるまでその人の人生そのものに関わります。だから多くの人間関係の悩みは愛着スタイルを知るとよくわかります。
愛着が形成されるのはおぎゃーと生まれた赤ちゃんからですが、相手は誰でもいいというわけでもなく、赤ん坊にとって「特別な人」との関係性が重要だといいます。これを愛着対象と呼んでいます。当然、まずは母親や父親との関係ですよね。
しかし両親が生まれてすぐいなくなっても、それが祖父母であったり、親戚であったり、養父母であったりしたとしてもいいんです。この子にとっての特別な人が必要なんです。だから親戚たらい回しなんてのが一番最悪で、心のよりどころがないために常に心が不安定な子になってしまいます。
愛着は人間関係に直結する
そして、愛着という感覚は、自己重要感、自己肯定感、自己信頼感につながる感覚でもあり、大人になってからの人間関係(友人関係、恋愛、結婚、子育て、仕事)などに大きく影響してしまうのです。
この愛着が安定していれば、ストレスに強く、むやみに他人と対立せず、良好な人間関係を築くので、仕事、結婚、子育て、対人関係で難しい悩みを抱えてストレスを溜めこむことが少ないことになります。
しかし、不安定な愛着だと、他人との関係性が常に不安定であり、トラブルが多い人生になりがちです。人間関係の問題を根本から見つめていくと、ほとんどが幼少期の親との問題、とくに「愛着の問題」と合致することが多いのです。
安定した愛着を育てるスキンシップの重要性
人は生まれてから母親との間に全面的な関心と愛情を注がれて育ちます。赤ちゃんは不安になったり、おむつが濡れたり、泣いたら、お母さんが飛んできて抱っこして声をかけてあやしたりしますね。
つまり、赤ん坊の欲求に対して、母親が反応して応える、という行為。ここはすごく大事なんですね。この行為が子どもの不安を取り去り、安心と安全を感じ、自分は愛されていると確信に至る重要な行為です。反応してくれるということは、赤ん坊が自分の欲求を出してもいい、応えてくれる人がいる、安心安全を感じる、と感じます。
反応とは、、、赤ん坊に、触れて、見て、聞いて、優しく声掛けをしてあげることです。
なかでも一番赤ん坊にとって心地よいのが「スキンシップ」です。触ってあげることは大事なんですね。触ると皮膚の温かさを感じますから、お母さんは優しくて温かくて安心、という感覚に繋がります。親に愛着を感じるのは皮膚感覚が入り口となって、五感を通じて心に脳に響くわけですからここが大事ですね。
このような五感を通じたスキンシップは非常に重要で、欲求を出したらお母さんが、温かい肌感覚と優しい言葉と目をみてくれる、という反応をもらえるからこそ、子どもは安心して欲求をだせるようになります。
ここで親がキレて叩いたりすると子どもが不安定になるのはおわかりかと思います。いますごく虐待が増えていますが、親の気持ちの不安定さはこんな赤ん坊の時期にもすでに重大な障害となって影響してしまうのです。
子どもにとって安心安全のセキュアベースとは?
とくに不安になったら親が来てくれて反応してくれる、という応答性と共感性は愛着にとって重要です。
何かがあって不安になっても、お母さんが来てくれる、抱っこして温もりを感じ、優しい声をかけてくれる、これを繰り返すうちに赤ちゃんは自然とこう感じます。この世界は安心安全だ、何があっても自分はいつも守られているんだ。という絶対の安心安全感を持つのです。
この親との間に築かれる安心安全感をセキュアベースといいます。
要するに親がセキュアベースであり、家庭家族そのものが安心安全のセキュアベースでなければ、子どもは安心して外の世界に
出ていくことができなくなります。
つまり、不安になっても温かい家に帰ればお母さんが「怖かったね、大丈夫だよ」と迎えてくれて安心させてくれる、という環境が必要なのです。それが子どもの冒険心を育み外の子ども達と安心して遊ぶことができ、大人になったら新しい未知の世界を探求する能力につながりやすいといえます。
しかし、安心安全であるはずの両親が憎み合い、いがみあい、争いの絶えない家庭だとまた愛着が一度安定しても、そこで崩壊してしまうことすらあるといいます。それくらい幼少期の家庭環境が子どもの心の成長に与える影響は大きいといえるでしょう。
無条件に私は愛されている、守られているという感覚
よく無条件の愛ってなに?とか、ありのままで私は愛されている?とかいいますが、そういう感覚は、幼児期の愛着形成に関係があるわけです。だから大人になってから急ごしらえで「ありのままでいい、私は愛されている、そのままでいい」と言っても空虚で頭の上をかすめて飛んでいってしまい、まったく腑に落ちない、という人々が多いのですが、もともと愛着に傷がある場合はそう感じたことがないから、腑に落ちないのは当たり前なんです。
この幼児期に安定した愛着が形成されて「自分は無条件で愛されているし安心安全でここにいていい」という感覚は、生きていくうえで最も重要な自己重要感の源になります。そうやって安定した愛着を持った子は、成長過程でも、情緒が安定していて、むやみにキレたりせずトラブルや逆境にも強く、基本人が好きなので対人関係も良好で、結婚も仕事も安定している人が多いのは当然といえます。まさに幸せをつかみやすいといえます。
そうやってみると、人間が生きていくのに必要なものは物質的な栄養だけではなく、愛情という心の栄養が脳と心の発達にも影響します。私たち人間は根源的に愛なしでは生きていけない生き物なんです。
そうやってたっぷりと愛情を受けスキンシップを受けた子どもは成長しても、世の中を人を無意味に怖がったりしません。どころか、「この世は安心安全だ、人は温かい」という絶対的な自信や安心感や自己肯定感や自己信頼感を手に入れて人生の幸せをつかみやすくなると言われています。
幼児期の愛情の質と量がその子の未来の幸せを決めてしまう?とまではいかないとは思いますが、愛着の質が将来の人間関係に多大な影響を及ぼすことは、多くのクライアントの成育歴に触れてきて確信しています。
では次に「不安定な愛着だとどのような問題になるのか?」「愛着に問題が生じるとき」について次回書いていきます。
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